Q1.がんの治療を受けている患者さんはなぜ食事が食べられないのでしょうか?

以下に要因を挙げてみましょう。

  • 患者さんの心の動き
  • がんの存在
  • 抗がん剤
  • 放射線
  • 手術

これらの要因は、患者さんの脳や身体に働いて、食に影響を及ぼします。
「今、困っているのはどのような症状か?」を担当医・看護師・栄養士に具体的に伝え、相談してみましょう。

【抗がん剤治療の場合】
がん細胞は正常な細胞がほんの少し変化したもので、分裂して数を増やし続けるという性質をもっています。治療が遅れると臓器を壊し、様々な場所に転移することもあります。
抗がん剤は、注射や点滴で血管内に投与する注射薬と、服薬する経口薬があります。それぞれに有効ながんの種類、効き具合、副作用などは異なっています。
抗がん剤が標的とするがん細胞の特徴は、正常細胞にも存在しています。全身をめぐる抗がん剤は、正常細胞の一部も傷つけ、副作用を引き起こします。
消化管の細胞が傷つくと、食べることに影響が出ます。消化管以外では血液や毛髪を作る細胞が抗がん剤で損傷を受けやすいといわれています。消化管障害では口内炎・食欲不振・吐き気・嘔吐・下痢などが見られます。
【放射線治療の場合】
放射線も抗がん剤と同じように、がん細胞を攻撃します。抗がん剤との大きな違いは全身への影響は少ないですが、照射された場所に強い効果を発揮するため照射を受けた場所で重い副作用が生じます。
口の中やのどまわりのがんでは、照射部位周辺の口内炎のため食事がとれなくなることがあります。
食道がんの場合は正常な食道の一部が傷つき、炎症や潰瘍が生じ、食物や水分の摂取で痛みや違和感が生じることがあります。腹部の照射では、腸が影響を受け食欲不振・吐き気・嘔吐・下痢などが生じます。
子宮がんや前立腺がんでは、大腸の下部や直腸が影響を受け、渋り腹のような下痢や血便がみられることがあります。
これらの照射部位の障害とは別に「放射線宿酔」とも呼ばれる妊娠中のつわりのような症状が現れることもあります。
このように放射線治療は食事に影響を及ぼすことが多くあります。
【がんの存在】
胃がんや大腸がんでは、初期に食事に影響がでることはありませんが、病状が進み、がんの一部がくずれて潰瘍ができると食欲がなくなったり、痛みが出たりします。
またがんが腸をふさいで腸閉塞を起こしたり、がんが原因で腸に穴があいたりすると激しい痛み・吐き気・嘔吐が生じ、食事は禁止されます。このような場合は静脈栄養やチューブ栄養などの医学的処置が施されます。
【食事と心】
気の持ちようで、食には大きな影響がでます。がんと診断され将来を悲観した場合や、痛みなどの症状が強い場合には食事をとる気にもなれません。
また、以前に赤い色の抗がん剤でおう吐がひどかった場合には、その点滴をみるだけで吐き気を生じたりすることがあります。このように抗がん剤の影響ではなく心が反応していることもあります。